インピンジメント症候群とは|福岡市中央区薬院の鍼灸院|吉村治療院
福岡市中央区薬院|鍼・マッサージ 吉村治療院
「あの角度だけ」痛むのは、
五十肩とは違う理由があります
「腕を横から上げていくと、途中でズキッと痛む」「棚の物を取ろうとすると、肩に引っかかるような痛みが出る」——その症状は、インピンジメント症候群かもしれません。
五十肩とよく似ていると思われがちですが、実際には原因も対応も異なる部分があります。24年間の臨床の中で、私は肩そのものだけでなく、肩甲骨や姿勢まで含めて評価する必要があると考えています。
こんな症状はありませんか
- 腕を横に上げていく途中、ある角度でだけズキッと痛む
- 棚の上の物を取る動作で肩に引っかかりを感じる
- 腕を思い切り振る動作(投球・サーブなど)で痛みが出る
- 腕を完全に上げきると、痛みが和らぐ、または感じにくくなる
- 肩の前側や外側に痛みを感じることが多い
- 安静にしていれば、比較的痛みは少ない
3つ以上当てはまる方は、インピンジメント症候群の可能性が考えられます。
インピンジメント症候群とは
腕を上げる際に、肩峰(けんぽう)という肩甲骨の一部と、上腕骨の間にある腱板(けんばん)や滑液包(かつえきほう)が挟み込まれることで、痛みや引っかかりが生じる状態です。
ペインフルアーク徴候
腕を横から上げていく途中、だいたい60度から120度あたりの範囲でだけ強い痛みが出て、それより上まで上げてしまうと痛みが和らぐ、という現象です。
野球の投球動作、テニスやバレーボールのオーバーヘッド動作、水泳など、腕を高く上げる動作を繰り返すスポーツで起こりやすいことから、「野球肩」「水泳肩」といった呼び方をされることもあります。ただし、スポーツをしていない方でも、姿勢の崩れや加齢による腱の変性によって起こることも少なくありません。
インピンジメント症候群になりやすい人
特に野球経験のある方に多くみられる症状です。少年野球・中学校野球・高校野球・社会人野球・草野球——競技レベルや年代を問わず、投球動作を繰り返してきた経験のある方は、肩峰下での挟み込みが起こりやすい傾向があります。学生時代に野球をしていて、現在は投げていないという方でも、当時の負担が影響しているケースを経験します。
意外と見落とされがちなのが、ウェイトトレーニングです。
僧帽筋や菱形筋が過緊張を起こすと、肩甲骨が本来のタイミングで上方回旋できなくなり、肩甲上腕リズムが乱れます。その結果、外転動作のすべてを肩甲上腕関節だけが担うことになり、肩峰下での挟み込みが起きやすくなるのです。大胸筋や広背筋といった拮抗筋が短縮し硬くなっているケースも、インナーマッスルである棘上筋の動きにブレーキをかけてしまうことがあります。
- テニス・バレーボール・水泳などオーバーヘッド動作の多いスポーツをしている方
- デスクワークで猫背や巻き肩の姿勢が定着している方
- 加齢によって腱板の柔軟性が低下している方
五十肩(肩関節周囲炎)との違い
どちらも「肩を動かすと痛い」という点で似ているため、混同されやすい症状です。しかし、いくつかの違いがあります。
五十肩
関節包そのものに炎症や癒着が起こり、あらゆる方向への動きが全体的に制限される。夜間痛が強く出やすく、他人に動かしてもらっても(他動運動でも)動きが制限される。
インピンジメント症候群
腱板と肩峰の間で物理的に挟み込みが起こる。特定の角度(特に60〜120度)でだけ痛みが強く、それ以外の角度では比較的動かせることが多い。他人に動かしてもらうと、自分で動かすより痛みが少ないこともある。
もちろん、実際には両方の要素が混在しているケースや、判断が難しいケースもあります。だからこそ、自己判断せず、丁寧な評価を受けていただきたいと考えています。
なぜ肩峰の下で挟み込みが起こるのか
肩峰の下にあるスペース(肩峰下腔)は、もともとそれほど広くありません。そこを、腱板や滑液包が、腕の上げ下げのたびに通過しています。このスペースが何らかの理由で狭くなると、腕を上げる動作のたびに、腱板や滑液包が肩峰にこすれたり挟まれたりしやすくなります。
肩峰下腔が狭くなる代表的な要因です。
- 猫背や巻き肩によって、肩甲骨が前に傾いてしまっている
- 肩甲骨を安定させるインナーマッスル(腱板)の機能が低下している
- 加齢によって腱板そのものが硬くなり、厚みが変化している
- 肩甲骨の動くタイミングにズレが生じている(肩甲上腕リズムの乱れ)
- オーバーヘッド動作の繰り返しによって、腱板に微細な負担が蓄積している
つまり、インピンジメント症候群は「肩関節の中だけ」の問題ではなく、肩甲骨の位置や動くタイミング、姿勢全体の影響を強く受ける症状だといえます。
当院の臨床でよくみられるパターン:棘上筋の柔軟性低下
当院に来院されるインピンジメント症候群の患者様の多くは、肩峰下腔で棘上筋(きょくじょうきん)、あるいは腱板が挟み込まれているケースです。その大きな原因の一つが、棘上筋そのものの柔軟性の低下だと、私は臨床の中で数多く見てきました。
棘上筋が硬く縮こまり、うまく収縮できなくなっていると、腕を横に上げる(外転する)動作のたびに、肩峰下のスペースで棘上筋や腱板が挟み込まれやすくなります。そこで当院では、鍼治療によって棘上筋そのものの緊張を緩め、柔軟性を取り戻すことを目指します。
肩甲上腕リズム
腕を外転させる動作は、上腕骨だけが単独で行っているわけではありません。本来は、上腕骨の外転と、肩甲骨の外転(上方回旋)が同時に連動しながら起こっています。肩甲骨の上方回旋を担っている筋肉がうまく働かなくなっていると、外転という動作のすべてを上腕骨側だけでまかなおうとしてしまい、肩峰下腔で棘上筋や腱板がより強く挟み込まれやすくなってしまうのです。
肩甲上腕リズムを乱す要因の一つが、僧帽筋や菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)の過緊張・拘縮です。特にウェイトトレーニングをされている方に、これらの筋肉の硬さがみられることが多くあります。
もう一つ見逃せないのが、広背筋・大胸筋です。棘上筋や三角筋の外転動作に対して反対の働きをする「拮抗筋」にあたり、過緊張を起こしていると外転動作にブレーキをかけるように働いてしまいます。パンプアップした体づくりをしている方ほど、これらの筋肉が短縮し硬くなっているケースを多くみかけます。
そのため当院では、原因となっている棘上筋だけでなく、僧帽筋・菱形筋・広背筋・大胸筋といった、肩甲骨と上腕骨の動きに関わるアウターマッスル・インナーマッスル双方へのアプローチもあわせて行っています。原因を一つに絞らず、関連する筋肉全体を評価し施術することで、回復のスピードが上がりやすいと感じています。
痛みの原因は、肩の中にあるとは限らない
腕を上げると肩が痛いからといって、原因が肩関節そのものにあるとは限りません。
- 肩甲骨を支える筋肉(僧帽筋下部・前鋸筋など)の機能低下
- 猫背や巻き肩による胸椎の可動域低下
- 首まわりの筋肉からのトリガーポイント(関連痛)
- 肩甲骨まわりの筋膜の連鎖(アナトミートレイン)の乱れ
当院では、このような「痛みの場所」と「原因の場所」が異なるケースを見逃さないよう、トリガーポイント・アナトミートレイン・姿勢と肩甲骨の動きという視点から全身を評価しています。肩峰下の挟み込みだけを繰り返し施術しても、その背景にある肩甲骨の位置や姿勢の崩れが残っていれば、同じ動作でまた痛みが再発してしまいます。だから当院では「肩の中」だけを診ません。
鍼治療・あん摩マッサージ指圧というアプローチ



当院では、トリガーポイント鍼治療・あん摩マッサージ指圧・肩甲骨と姿勢の可動域評価・セルフケア指導を組み合わせながら施術を行っています。
鍼治療では、腱板や肩甲骨まわりの深部の筋肉へアプローチし、緊張を和らげることを目指します。あん摩マッサージ指圧では、肩甲骨と胸郭の滑走性、筋膜の柔軟性の改善を図ります。さらに、肩甲骨が正しいタイミングで正しい方向に動いているか、姿勢全体に崩れがないかまで確認し、肩峰下腔が再び狭くならないような身体づくりを目指しています。
「刺激と材料」という考え方
施術の考え方として、私はいつも「刺激と材料」という言葉を使っています。鍼は刺激です。筋肉や腱は、材料がなければ変わることができません。
「食事はちゃんと摂っているので、栄養失調ではないと思います」という方も少なくありません。しかし、体作りの材料として大切なのは、量だけではなく質です。良質なたんぱく質・ビタミン・ミネラルが、腱板のような組織を修復するための材料として十分に足りているかどうかが重要になります。
また、アルコールの分解には、本来筋肉や腱の修復に使われるはずの栄養素が使われてしまうため、飲酒の習慣が回復を妨げてしまうことがあります。鍼という刺激だけを重ねても、材料が不足していれば、身体は十分に応えることができません。
「穴の空いたバケツ理論」で考える
痛みや違和感のある身体は、穴の空いたバケツと同じです。
その穴となっているのが、不良姿勢・栄養状態の乱れ・生活習慣・運動不足です。これらの穴から、身体を支える力が少しずつ漏れ続けている状態こそが、インピンジメント症候群のような症状の土台になっていると私は考えています。
鍼治療やあん摩マッサージ指圧は、このバケツに水を注ぐ行為です。症状を和らげ、身体が本来持っている自然治癒力を引き出すことはできます。しかし、穴が空いたままでは、水を注いでも少しずつ漏れ続けてしまいます。
穴を塞ぐために必要なのは、姿勢改善・セルフケア・栄養と運動・質の良い睡眠です。症状改善の近道は、痛みが出てから水を注ぎ続けることではなく、まずこの穴を塞ぐことだと私は考えています。
骨で支える身体という考え方
人の身体は、筋肉で支えているのではありません。
本来は骨格で身体を支え、その骨格を筋肉が補助しています。
骨格で支えられなくなると、筋肉は常に緊張し続けます。
この状態が長く続くことで、肩関節にも負担が集中すると私は考えています。
これは、24年間の臨床の中で私がたどり着いた身体の見方です。猫背や巻き肩によって骨格で支えられなくなった身体は、肩甲骨が本来の位置からずれ、肩峰下腔が狭くなりやすい状態を作ってしまいます。だからこそ当院では、その場だけの変化ではなく、骨格から身体を根本的に整えていくことを大切にしています。
症例
デスクワーク中心の40代男性で、趣味のテニスでサーブを打つたびに肩の外側にズキッとした痛みが出るようになった、というケースです。
お身体を評価すると、猫背と巻き肩による肩甲骨の前傾、僧帽筋下部・前鋸筋の機能低下、肩甲骨の動くタイミングのズレ(肩甲上腕リズムの乱れ)がみられました。
このようなケースでは、肩峰下の炎症を和らげる施術に加えて、肩甲骨まわりの筋肉へのトリガーポイント鍼治療、姿勢改善のためのセルフケア指導を組み合わせることで、施術を重ねる中で痛みの出る角度が徐々に狭まり、サーブ動作の痛みが軽減していく、という経過をたどることが多くあります。
※症状の経過には個人差があります。すべての方に同じ効果を保証するものではありません。
吉村治療院の施術アプローチ
一人ひとりの症状の原因に合わせたオーダーメイドの施術を行っています。
そのため当院では、平均して3か月・8回程度の通院を目安に、姿勢や生活習慣という「穴」を少しずつ塞ぎながら施術を進めています。肩甲骨の位置や動き方のクセが定着するまでに時間がかかっているのと同じように、それを整え直すにも一定の期間が必要だと考えているためです。
ご自宅でできるセルフケア
- 痛みの出る角度を無理に繰り返さない
- 猫背や巻き肩を意識し、胸を開く姿勢を心がける
- 肩甲骨を寄せる・下げる意識を持ったストレッチを行う
- オーバーヘッド動作をするスポーツの前後には、肩甲骨まわりのウォームアップ・クールダウンを行う
- 長時間同じ姿勢でのデスクワークやスマホ操作を避ける
- たんぱく質・ビタミン・ミネラルを意識した食事を心がける
痛みが強い時期に無理に動かすと悪化することもあるため、判断に迷う場合は一度専門家へご相談ください。
よくあるご質問
Q.インピンジメント症候群と五十肩はどう見分ければいいですか。
A.インピンジメント症候群は、特定の角度(60〜120度あたり)でだけ強い痛みが出て、それ以外の角度では動かしやすいことが多いのが特徴です。一方、五十肩はあらゆる方向への動きが全体的に制限され、夜間痛も強く出やすい傾向があります。ただし、実際には見分けが難しいケースもあるため、自己判断せず評価を受けることをおすすめします。
Q.手術が必要になることはありますか。
A.腱板が断裂している場合など、状態によっては手術が検討されることもあります。まずは画像検査を含めた医療機関での評価と、保存療法(鍼治療やリハビリなど)による経過を確認することが一般的です。
Q.運動やスポーツを続けても大丈夫ですか。
A.痛みの出る動作を無理に繰り返すと悪化することがあります。フォームの見直しや、肩甲骨まわりの機能改善と並行しながら、負担の少ない範囲で継続できるかを判断することをおすすめします。
Q.何もしていなくても痛みますか。
A.インピンジメント症候群は、特定の動作時に痛みが出ることが多く、安静時の痛みは比較的少ない傾向があります。安静時にも強い痛みがある場合は、他の原因も含めて評価が必要です。
Q.温める方がいいですか、冷やす方がいいですか。
A.急な炎症で熱感がある場合は冷却が向くこともありますが、慢性的な状態では血流を促す温めが適していることが多いです。判断に迷う場合はご相談ください。
Q.鍼治療はどのように効果がありますか。
A.肩峰下腔の狭小化に関わる筋肉の緊張を緩め、肩甲骨の動きを整えることで、挟み込みが起こりにくい状態を目指します。マッサージでは届きにくい深部の筋肉へも直接アプローチできることが特徴です。
Q.継続治療はなぜ必要ですか?
A.人間の身体は急激な変化を好みません。長年かけて形成された不調は、一度の刺激で完全に変わるものではありません。一定期間、適切な外的刺激(鍼・手技)を重ねていくことで、筋緊張の正常化・関節の柔軟性向上・自律神経の正常化・姿勢の改善などが徐々に安定していきます。これが「体質が変わる」プロセスです。
インピンジメント症候群でお悩みの方へ
インピンジメント症候群は、五十肩と混同されやすい一方で、原因も対応も異なる部分がある症状です。「腕を上げると痛いけれど、五十肩とは少し違う気がする。」そう感じている方も、身体はすでに穴の空いたバケツのように、日々力が漏れ続けているサインを送っています。
すべての方に治療が必要というわけではありませんが、特定の動作で痛みが続く場合は、一度身体の状態を確認することをおすすめします。腕を上げると痛む。それは身体からの「まだ間に合いますよ」というメッセージなのかもしれません。
痛みが出てからではなく、身体が送ってくれる小さなサインに耳を傾ける。それが、10年後、20年後も自分の腕でスポーツや日常を楽しみ続けるための第一歩になると私は考えています。
吉村治療院では、肩関節だけではなく、肩甲骨・姿勢・栄養まで含めて、あなたの身体全体を診させていただきます。「腕を上げると引っかかる、痛みが出る。」そんな方は、お気軽にご相談ください。
吉村 大樹(よしむら だいき)
株式会社LITA GROUP 代表/吉村治療院 院長
国家資格(はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)
臨床24年/一般社団法人 日本線維筋痛症・慢性痛学会 診療ネットワーク参加施設(同学会公開情報による・2026年10月確認)
鍼・マッサージ 吉村治療院 院長 吉村大樹
肩・腕の症状別に、ご説明しています
あわせてご覧ください
はじめてお越しになる方へ
鍼・マッサージ 吉村治療院/福岡市中央区薬院2-14-21 フィット薬院301
薬院大通駅から徒歩5分|月・火・木・金 10:00〜20:00/土 9:00〜18:00|水・日休診|完全予約制
強引にご予約をお取りすることはありません。