起立性調節障害と栄養の関係
起立性調節障害とは
起立性調節障害は、主に成長期・思春期の子どもに多くみられる体調不良です。
- 朝起きられない
- 立ち上がるとふらつく
- 動悸・頭痛・腹痛
- 強い倦怠感
- 集中力の低下
- 気分の落ち込み
など、症状は多岐にわたり、周囲から「怠けている」「気持ちの問題ではないか」と誤解されてしまうことも少なくありません。
一般的には「自律神経の働きがうまく切り替わらない状態」と説明されることが多い症状です。
自律神経の問題だけではない、という視点
臨床の現場で多くのお子さんを診ていて感じるのは、起立性調節障害は自律神経そのものの異常というよりも、エネルギーを生み出すための材料が不足している状態が背景にあるケースが非常に多い、ということです。
エネルギーは、自然に湧いてくるものではありません。体の中でエネルギーを作るためには、タンパク質・鉄・ビタミンやミネラルといった材料が必要です。
その材料が不足していれば、朝起きることも、立ち上がることも、自律神経を切り替えることも難しくなってしまいます。
成長期は、「材料不足」が起こりやすい時期です
起立性調節障害が多くみられる時期は、ちょうど成長期と重なります。成長期の体では、骨・筋肉・血液・神経・ホルモンが急速につくられており、大人以上に多くの栄養を必要とします。
しかし現実には、食事量が少ない・朝食を抜いている・偏食がある・忙しく簡便な食事が多い、といった背景から、「食べているつもりでも足りていない」状態に陥っていることも少なくありません。
タンパク質は、エネルギーを生み出す土台
タンパク質は、筋肉の材料というイメージが強いかもしれませんが、神経・血管・酵素・ホルモン・ミトコンドリア(エネルギー産生の場)など、体の働きの根幹を支えています。
どれだけ糖質を摂っても、それを使ってエネルギーを生み出すためのタンパク質が不足していれば、体はうまく動けません。
起立性調節障害を「自律神経の切り替えの問題」だけでなく、体を動かすための土台不足として捉えることが、回復への大切な視点になります。
鉄不足と、脳・自律神経の関係
鉄は、血液中で酸素を運ぶ役割を担っています。成長期、とくに思春期では、身長の急激な伸び・月経の開始などにより、鉄の必要量が一気に増えます。
鉄が不足すると、立ちくらみ・ふらつき・集中力低下・強い疲労感といった症状が現れやすくなり、起立性調節障害と重なる部分も多く見られます。
加工食品・高糖質な食事と「質的栄養失調」
加工食品や甘いもの中心の食生活では、糖質が多い・タンパク質が少ない・ビタミンやミネラルが不足しやすい、という傾向があります。
量は食べていても、体を作り、エネルギーを生み出すための材料が足りていない状態。これを質的栄養失調と呼ぶことがあります。
また、高糖質な食事が続くと、血糖値の乱高下・イライラ・不安感・気分の落ち込みなど、メンタルや自律神経にも影響が出やすくなります。
「補食」という考え方
起立性調節障害のサポートでは、1日3食だけで栄養を満たそうとするよりも、補食を取り入れることが助けになる場合があります。補食とは、お菓子ではなく、体を安定させるための栄養補給という考え方です。
補食の例
- ナッツ類
- ゆで卵
- チーズ
- プロテイン
- 就寝前の少量のはちみつ
タンパク質や脂質を含む補食は、血糖値を安定させ、自律神経への負担を減らす助けになります。
鍼治療という、外側からのサポート
当院では、血流の改善・自律神経のバランス調整・内臓機能へのアプローチを目的とした鍼治療を行っています。東洋医学では古くから、消化器と全身の状態は深く関係していると考えられてきました。
体を整える刺激(外側)と、体を作る材料(内側)。この両方がそろって、回復の土台が整います。
まとめ
起立性調節障害は、心の弱さや甘えではありません。成長期という大きな変化の中で、エネルギーを生み出すための材料が不足しているサインとして現れている可能性があります。
焦らず、責めず、体に必要なものを一つずつ満たしていくこと。その積み重ねが、回復への道につながると私は考えています。
体を作る「材料」という視点
当院では、体を整えるためには血流や神経へのアプローチだけでなく、体を作り、エネルギーを生み出す材料となる栄養も大切だと考えています。その考え方の延長として、必要に応じて栄養の取り方についてもお伝えしています。
症状×栄養シリーズ(関連ページ)
※当院では、施術だけでなく「体をつくる材料=栄養」という視点も大切にしています。