ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の原因と鍼治療|福岡市中央区薬院 吉村治療院
「スマートフォンを操作していると手首の親指側が痛む」「赤ちゃんを抱っこすると手首にズキッとした痛みが走る」「物をつまむ・握ると手首の親指側が痛い」。こうした痛みは、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)と呼ばれることがあります。
親指を動かす腱と、その腱を包むトンネルのような組織(腱鞘)がこすれ合い、炎症を起こした状態です。子育て中の方、スマートフォンをよく使う方、手をよく使う仕事の方に多く見られます。
関係しているのは、長母指外転筋(ちょうぼしがいてんきん/APL)と短母指伸筋(たんぼししんきん/EPB)という、前腕から親指へ伸びる2本の腱です。この2本の腱は、手首の骨(橈骨茎状突起)のすぐそばで、共通のトンネル(腱鞘)の中を一緒に通り抜けています。親指を頻繁に動かすと、このトンネルの中で腱がこすれ合い、炎症を起こしやすくなります。
こんな症状はありませんか
- 手首の親指側(拇指側)を押すと痛みがある
- 親指を広げる・伸ばす動作で痛みが響く
- スマートフォンの片手操作を続けると、手首がだるく痛くなる
- 赤ちゃんを抱っこする、タオルを絞るなど、手首をひねる動作で痛む
当院の見立て|
ドケルバン病と母指CM関節症の違い
手首の親指側の痛みでは、ドケルバン病と母指CM関節症が混同されることがあります。痛む場所が近く、診断する側が「腱」を見ているか「関節」を見ているかによって、同じような症状でも違う診断名がつくことがあるためです。
ドケルバン病は、親指を動かす腱とその腱鞘(腱の通り道)の炎症です。親指を広げる・伸ばす動作で痛みが出やすく、比較的若い世代や、産後の方にも多く見られます。
一方、母指CM関節症は、親指の付け根の関節そのものの変形(変形性関節症)です。物をつまむ・ひねる動作で痛みが出やすく、年齢を重ねた方に多い傾向があります。
ご自身がどちらに近いか分からない場合は、母指CM関節症のページもあわせてご確認ください。
なぜ起こるのか|
スマホと育児が重なる負担
スマートフォンの片手操作は、手首を固定したまま親指だけを動かし続ける、負担の大きい動作です。手首を固定する筋肉と、親指を動かす筋肉の両方に強い緊張が続きます。毎日の習慣的な動作であるため、疲労が蓄積しやすいのが特徴です。
子育て中の方、特に赤ちゃんの抱っこや授乳の動作も、手首を親指側に傾けた状態を繰り返し保つため、同じ場所に負担がかかります。保育士の方など、お子さんを日常的に抱える仕事の方にも多く見られます。
産後の方では、もう一つ見逃せない要因があります。授乳によって、母体の鉄分やタンパク質が赤ちゃんへと分け与えられるため、ご自身の体では鉄不足・タンパク質不足が起こりやすくなります。これらは筋肉や腱の材料そのものであるため、不足すると組織の修復が追いつかず、痛みが長引く一因になると考えています。
手首・親指の痛みも、
体の土台とつながっています
テニス肘・ゴルフ肘と同じように、手首・親指の痛みも前腕だけの問題ではありません。上腕、小胸筋や胸まわり、広背筋、肩甲骨まわりのインナーマッスル(回旋筋腱板)まで、負担はつながっています。
さらにたどっていくと、骨盤の後傾や背骨の丸まり(円背)に行き着くことも少なくありません。背中が丸まると、肩甲骨は外側へ開いた状態(外転位)になり、腕を動かすたびに本来とは違う筋肉に負担がかかりやすくなります。骨盤が適切な位置にあり、背骨に自然なS字カーブがあって、体を効率よく支えられる姿勢(パワーポジション)が取れていることが、手先の負担を減らすうえでも大切だと考えています。
当院のアプローチ
① 触診で、硬くなった筋肉を探す
長母指外転筋・短母指伸筋の腱の状態だけでなく、これらの筋肉が始まる前腕から上腕、肩甲骨まわりまで含めて評価します。
② 鍼で、トリガーポイントにアプローチ
マッサージでは届きにくい深さの筋肉に、鍼で直接アプローチします。状態に応じて電気治療を併用することもあります。
③ ご自宅での「置き針」によるケア
必要に応じて、円皮鍼(パイオネックスなど)と呼ばれる小さな置き針を貼らせていただくこともあります。1〜2日ほど貼ったままにしていただくことで、断続的に鍼刺激が入り続け、通院の間も筋肉や腱の緊張がゆるみやすくなります。
自宅でできるセルフケア
- スマートフォンの使用時間・持ち方を見直す。両手で持つ、台に置いて操作するなど、片手操作を減らす工夫をする
- 前腕・親指まわりのストレッチ
- お風呂で温める・セルフマッサージで血流を良くする
- タンパク質・鉄・ビタミンCを意識して摂る。食事で不足しがちな場合は、サプリメントの活用も選択肢です
痛みが一度引いても、同じようにスマートフォンを操作し続ければ、負担は再び蓄積していきます。使い方そのものを見直すことが、再発を防ぐうえで欠かせません。
医療機関の受診が必要な場合
手首の腫れが強い、安静にしていても強い痛みがある場合は、まず整形外科での検査をおすすめします。医師の診断を受けたうえで、当院でのケアを併用していただくことも可能です。
よくある質問
Q.自分がドケルバン病か母指CM関節症か分かりません。
A.ご自身で見分けるのは難しいことも多いです。初回の触診で、腱の炎症によるものか、関節の問題が関係しているかを評価したうえで、施術をご提案します。
Q.授乳中でも施術を受けられますか?
A.はい、受けていただけます。授乳中の栄養状態についても、あわせてご相談いただけます。
Q.何回くらいで改善しますか?
A.症状の程度や、日常でのスマートフォン・育児での手の使い方によって異なります。初回にお体の状態をうかがったうえで、通院のペースをご提案します。
Q.継続治療はなぜ必要ですか?
A.人間の身体は急激な変化を好みません。長年かけて形成された不調は、一度の刺激で完全に変わるものではありません。一定期間、適切な外的刺激(鍼・手技)を重ねていくことで、筋緊張の正常化・関節の柔軟性向上・自律神経の正常化・姿勢の改善などが徐々に安定していきます。これが「体質が変わる」プロセスです。
まずはお気軽にご相談ください
育児中は、ご自身の体をあとまわしにしがちです。痛みをかばいながらの育児・家事は、手首だけでなく肩や腕にも負担が広がります。
これまで患部への電気治療・アイシング・テーピングといった局所の処置だけを受けてこられた方は、なかなか改善しない理由が、手首から離れた体の中心(骨盤や背骨、肩まわり)にあるのかもしれません。当院の施術を通じて、そのつながりを感じていただけると思います。
鍼・マッサージ 吉村治療院 院長 吉村大樹